こんにちは、ホウボウです。
この記事からは、簿記における「有価証券」の扱いについて学んでいきましょう。
今回は、「有価証券」とはどんなものかを理解できるようにします。
なんとなく聞いたことはあるけど、実際はどんなものか想像がしづらいですよね。
そこでまずは、「有価証券」の種類や分類、それぞれの特徴について大雑把に理解して仕訳をする際の手助けとなる知識を蓄えていきます!
各級での出題範囲(「有価証券」分野)
まず最初に、「有価証券」の分野において、各級で出題される範囲を確認しておきましょう。ボタンをタッチかクリックすると詳細が開きます。
売買・債券の端数利息の処理 、売買目的有価証券(時価法)、分記法による処理
売買目的有価証券(約定日基準、修正受渡基準)、貸付・借入・差入・預り・保管 、売買目的有価証券の総記法による処理
(参考:商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表(2019年4月現在)」)
「有価証券」の分野は、2級以上から出題されます。
2019年に3級の出題範囲が大きく変更され、それまで出題範囲に含まれていた「有価証券」はまるごと2級へ移動になりました。3級受験者からすれば嬉しい変更ですね!
そのため、現在では2級以上に挑戦する方向けの対策記事になってしまいましたが、「有価証券」の話は社会人であれば誰しもが知っておくべき分野でもあります。
是非、興味のある方は最後まで記事をご覧になっていただければと思います。
今回登場する勘定科目
今回登場する「有価証券」分野で覚えるべき勘定科目は以下の通りです。
- 売買目的有価証券:売買時に生じる価格の差額を利用して、短期的に利益を得るために保有する有価証券のこと。
- 満期保有目的債券:満期まで保有し続ける目的の債券のこと。
- 子会社株式:発行済株式総数の過半数を保有している相手会社の株式。
- 関連会社株式:発行済株式総数の20%~50%を保有している相手会社の株式。
- その他有価証券:上記のどれにも当てはまらない有価証券のこと。
「有価証券」ってどんなもの?
それではさっそく「有価証券」とはどんなものか理解していきましょう。
「有価証券」とは、一言で言ってしまえば「価値の有る証券」のことです。
なんとなく分かったような、でもまだ分からないような気がしますね・・・笑。
具体的に見ていきましょう。
「有価証券」と呼ばれているものは、具体的に以下のようなものです。
- 株式:会社が投資家からお金を集めるために発行するもの。
- 社債:会社が借金をするときに発行するもの。
- 国債:国が借金をするときに発行するもの。
「有価証券」の代表例を持ってきてみました。
まず「株式」は、株式会社でお馴染みの言葉ですね。
株式会社という形態をとる会社は、この「株式」を発行して投資家に買ってもらうことでビジネスの資金を得ます。「株式」は単純に「株」と呼ぶこともあります。ちなみにこの「株式」を持っている人のことを「株主」と呼びます。
一般の人でも「株主優待」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、これは「株式」を購入して保有することで「株主」となり、定期的に会社から商品券や物品をもらえるという「優待」を得られるしくみです。
また、「株主優待」以外にも、「配当」という形で会社から金銭を受け取ることもできます。こちらは「配当金」と呼ばれていますよね。
そして、この「株式」は、自由に売買をすることもできます。
「株式」を持っている人からすれば、他人に譲ることでその分のお金をもらえるわけですね。つまり、「株式」は金銭的に価値が有るということになります。
このように、現金に換えることのできる価値が有る証券を、「有価証券」と呼ぶのですね。
社債や国債はまとめて「公社債」と呼ばれますが、こちらも会社や国の借金になるので、期限が来れば現金に換えることができます。立派な「有価証券」です。
有価証券の分類(保有する目的によるもの)
それでは、なぜ企業はこういった有価証券を持つのでしょうか?
簿記で「有価証券」が登場するということは、企業活動において「有価証券」のやり取りをする場面が出てくるということに他なりません。
「株式」や「公社債」といった有価証券は、配当や利息という形で保有しているだけで金銭を受け取ることができます。
個人でもそうですが、企業も余っているお金をこういった「有価証券」に投資して、利益を得たほうがお得ですよね。こういった有価証券を「投資有価証券」と呼びます。特に満期まで保有するのが目的の債券を「満期保有目的債券」と呼ばれます。
また、「株式」だとイメージしやすいと思いますが、「株式」は毎日値動きがあって価格が変動しており、「株式」が安いときに買って高くなったときに売れば、短期間で儲けることが可能です。このような目的で保有している有価証券は、「売買目的有価証券」と呼ばれます。
この「満期保有目的債券」や「売買目的有価証券」という言葉は、勘定科目としても使われますので、是非ここで使い分けとともに覚えておきましょう。
有価証券の分類(子会社株式・関連会社株式)
最近、M&Aなどを行う企業が増え、ニュースなどでも「企業を買収した」という言葉をよく見かけるようになりました。
この「企業を買収」という言葉ですが、実際はどのように他の会社を買収するのか考えたことはありますか?
もちろん様々な方法がありますが、その中でも比較的簡単な方法と言われているのが「株式譲渡」です。こちらも聞いたことはあるのではないでしょうか。
「株式譲渡」とは、文字通り「株式」を他の企業などに「譲り渡す」ことです。
先ほど、「株式」を持っている人はその会社の「株主」になるという話をしました。
「株主」というのは、その会社に出資しているいわば「会社のオーナー」に当たるので、例えば全株式の半分以上を持っていれば、他の株主が全員反対したとしても多数決で自分の意見を押し通すことができます。
つまり、その会社が発行している「株式」の半数以上を保有していれば、その会社を「支配」していることになります。この関係を「親会社」「子会社」の関係といいます。
「親会社」がある企業の「株式」を半数以上取得した場合、その企業は「子会社」になるというわけですね。これが企業を買収するということです。
そして「親会社」が持っている「子会社」の株式のことを「子会社株式」と呼びます。
企業買収が増えてきていることもあって、試験の中でもこの「子会社株式」に関連する問題が増えてきています。具体的には以下のような問題です。
【例】A商事株式会社は、B商事株式会社の株式 300 株を@¥1,500 で取得し、代金は小切手を振り出して支払った。なお、B商事株式会社の発行済株式総数は 500 株である。
【仕訳】(子会社株式)450,000 |(当座預金)450,000
上の例では、A商事がB商事を買収しようとしている場面ですね。
B商事の発行済株式総数500株のうち300株を買い占めるわけですから、A商事は実に60%ものB商事の株を保有することになります。株式を50%よりも多く持つと子会社になるわけですから、借方は「子会社株式」(資産)の増加、貸方は「当座預金」(資産)の減少となります。金額は、1株1,500円×300株で450,000円ですね。
では、以下のようなケースはどうでしょうか?
【例】A商事株式会社は、B商事株式会社の株式 200 株を@¥1,500 で取得し、代金は小切手を振り出して支払った。なお、B商事株式会社の発行済株式総数は 500 株である。
【仕訳】(関連会社株式)300,000 |(当座預金)300,000
変わったのは、今回取得したB商事の株が「300株」から「200株」へ減ったということです。
200株の場合、B商事の発行済株式総数500株のうち40%ということになるので、「子会社」と呼ぶことはできなさそうです。
しかし、20%~50%の株式を保有している場合は、その会社を支配はできなくても影響力を及ぼすことができるということで「関連会社」と呼びます。
よってこの例では、借方に「関連会社株式」という勘定科目を置けばよいということになります。こちらも併せて覚えておきましょう。
※「子会社株式」と「関連会社株式」は合わせて「関係会社株式」と呼ばれることもあります。
その他の有価証券
最後に、以下のような例を見てみましょう。
【例】A商事株式会社は、長期利殖目的でB商事株式会社の株式 100 株を@¥1,500 で取得し、代金は普通預金よりC証券会社へ即座に支払った。
【仕訳】(その他有価証券)150,000 |(普通預金)150,000
「長期利殖目的」ってなんだ!?となったかもしれませんが笑、難しくはありません。
長期保有して利益を得る目的のことです。つまり、短期的に売買する目的の「売買目的有価証券」ではないということですね。
もちろん「株式」なので「満期保有目的債券」には当たりませんし、B商事の発行済株式総数が分かりませんから「子会社株式」にも「関連会社株式」にも当てはめられません。
このように消去法で最後まで残った場合は、「その他有価証券」として扱います。
この例のように、「長期保有する株式」などが代表例ですね。
「株式」や「債券」の売買があったときに、どの勘定科目にも当てはまらなさそうだなと思ったら「その他有価証券」を使えば大丈夫です。
まとめ
今回は、「有価証券」について見ていきました。
まず「有価証券」は、現金などに換えられる「価値の有る証券」のことだということをおさえておきましょう。具体的には、「株式」や「公社債」です。
また、「有価証券」は保有する目的によって使う勘定科目が異なるのでした。
それぞれの勘定科目は、これからも使っていきますので、今回出てきたものがそれぞれ「どんな目的で保有しているときに使われるのか」をよく覚えておきましょう。
次回は、有価証券を取得したときの仕訳について詳しく学んでいきましょう。ここから本格的に問題を解けるようにしていきますよ!
それでは、今回もお疲れさまでした。
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