こんにちは、ホウボウです。
この記事でも、前回までに引き続き「現金預金」分野を学んでいきましょう。
今回は、「小口現金」について理解できるようにします。
前回の記事では、現金預金分野の中でも若干ややこしい「現金過不足」を解説してありますので、気になる方はこちらからご覧いただければと思います。
それでは、さっそく見ていきましょう!
各級での出題範囲(「現金預金」分野)
まず最初に、「現金預金」の分野において、各級で出題される範囲を確認しておきましょう。ボタンをタッチかクリックすると詳細が開きます。
現金、現金出納帳、現金過不足、当座預金・その他の預貯金(複数口座を開設している場合の管理を含む)、当座預金出納帳、小口現金、小口現金出納帳
銀行勘定調整表
(参考:商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表(2019年4月現在)」)
「現金預金」の分野は、ほとんどの範囲が3級から出題されます。
現金や預金の種類はささっとおさえ、現金過不足など帳簿上と実際の現預金に誤差がある場合の仕分けといった、考え方がややこしい項目に勉強時間を割くようにすると効率的です。
今回登場する勘定科目
「現金預金」分野で覚えるべき勘定科目は以下の通りです。
- 現金:日常的に使われる紙幣や硬貨はもちろん、銀行に持っていくと紙幣などに換えてもらえるもの(実質現金のようなもの;他人振出小切手や配当金領収証など)をやり取りした場合に使います。
- 現金過不足:現金の帳簿上残高と実際残高が一致しない場合に使います。一時的な処理のために用いるので、決算時には振替仕訳を行います。
- 普通預金:個人が利用する銀行口座と同じようなもので、この口座から直接振り込んだり、振り込まれたりした場合に使います。
- 当座預金:利息が付かない預金で、主に現金の代わりとして手形や小切手で支払いのやり取りをする場合に使います。
- 定期預金:一定期間払い戻しができない預金で、この口座を用いてやり取りした場合に使います。
「小口現金」ってなんだ?
それでは今回の本題である「小口現金」について見ていきましょう。
「小口現金」とは、日々の細々とした支払いに充てるためにあらかじめ渡しておく少額のお金のことを指します。
特に大規模な企業に勤めている方はピンとくると思いますが、会社にいると、書類を郵送するための切手代や書類作成のための文房具代、営業先や取引先に行くための交通費など、日常で発生するちょっとした支出が多々あります。
そのために、財務部や経理部などお金を管理している部署にいちいち申請を出すのは手間ですよね。
そこで、各部署や各支店に、あらかじめまとまった金額を渡しておいて管理してもらい、日常発生する細かい支払いはそこから使うようにしてもらいます。
このお金のことを「小口現金」と言います。
そして、小口現金を管理している各部署や各支店は、具体的に何にいくら使ったのかを一定期間ごとに経理へ報告します。
その後経理では報告をもとに、文房具なら「消耗品費」、電車代なら「旅費交通費」など、具体的な仕訳をしていきます。
このように、一定金額をあらかじめ渡しておき、後から詳細を報告してもらう方法を「定額資金前渡法(インプレスト・システム)」といいます。
最後に、各部署や各支店で使った分の小口現金をまた補充して、次の期間へ準備をして1サイクルが終了します。
流れを整理すると以下のようになります。
- 各部署へあらかじめ一定金額の「小口現金」を渡す。
- 日常発生する支払いは「小口現金」からそれぞれが賄う。
- 一定期間ごとに、「小口現金」の使用明細を経理へ報告する。
- 経理は、報告をもとに仕訳を行う。
- 足りなくなった各部署の「小口現金」にお金を補充する。
この流れを頭の中に入れて、それでは具体的な仕訳を見ていきましょう。
小口現金を用いた具体的な仕訳
小口現金①小口現金を前渡しするときの仕訳
【例】×2年5月1日、小口現金100000円を、小切手を振り出して小口現金係へ渡した。なお、当社では定額資金前渡法を採用している。
【仕訳】(小口現金)100,000 |(当座預金)100,000
小口現金係とは、各部署でお金を管理している人のことです。
今回のケースでは、経理からあらかじめ小口現金が部署へ渡されたときの仕訳になりますね。
「小口現金」は、普通の現金と同じく資産なので、借方へ置きます。小口現金として10万円渡したから、「小口現金」という資産が10万円増えたということですね。
さて、どこかから現金を渡しているので、当然減った分もあるということになります。
今回は「小切手を振り出して渡した」とあるので、「当座預金」から現金を引き出したんですね。小切手を振り出せるのは「当座預金」だけで、普通預金などではできません。よく問題に出てくるので、この知識は是非覚えておきましょう。
ということで、貸方の方は「当座預金」の減少になり、上のような仕訳になります。
「当座預金」を10万円減らして、「小口現金」を10万円増やしたということになります。
小口現金②各部署からの報告を受けて行う仕訳
【例】×2年5月31日、小口現金係より、交通費55000円、電話代10000円、切手代7200円、文房具代3000円、茶菓子代2800円を小口現金で支払ったという報告を受けた。
【仕訳】(旅費交通費)55,000 |(小口現金)78,000
(通信費)17,200 |
(消耗品費)3,000 |
(雑費)2,800 |
ここで一番重要なのは、「報告を受けた」という部分です。
各部署では日々、小口現金からの支払いが行われているはずですが、そこでは仕訳を打ちません。各部署で一定期間(1か月など)の支払いをまとめてもらい、報告を受けた地点ではじめて仕訳がされます。「小口現金で支払った」だけでは経理は把握できないわけですから、仕訳は行いませんので注意しましょう。
例では現実に即して、様々な経費を仕訳する練習として、使う勘定科目を若干多くしてみました。
実際の実務では、様々な経費をどの勘定科目で処理するか考えながらそれぞれ仕訳を行っていくので、一番経理実務に近い仕訳ですから、頑張ってやってみましょう。
交通費は「旅費交通費」、電話代や切手代は「通信費」、文房具代は「消耗品費」、茶菓子代は「雑費」など、お金を使ったものや目的によって振り分ける「勘定科目」の名前が決まっていますので、どの支出をどの勘定科目で仕訳するかはちょっとずつ慣れて覚えていきましょう。
上の仕訳を見てまだ知らない勘定科目があるという方は、ここではそういう勘定科目もあるのかと読み流していただいて構いません。
ひとまず、報告を受けたら上のような具体的な仕訳をする、ということだけ覚えておきましょう。
貸方は、もちろん使った分の「小口現金」を減らします。
小口現金③小口現金の補充
【例】×2年6月1日、前日に支払報告を受けた小口現金について、小口現金78,000円を、小切手を振り出して補給した。なお、当社は定額資金前渡法を採用し、小口現金として100,000円を前渡ししている。
【仕訳】(小口現金)78,000 |(当座預金)78,000
例では6月に入ったということで、5月に使った小口現金78,000円分を補充して、あらためて「小口現金」10万円分を前渡しする状態に戻す仕訳をしています。
ここはそこまで難しくないと思います。
小口現金④小口現金の補充(支払報告と同じタイミングの場合)
【例】×2年6月1日、小口現金係より、交通費55000円、電話代10000円、切手代7200円、文房具代3000円、茶菓子代2800円を小口現金で支払ったという報告を受けた。また、報告を受けて小口現金78,000円を、小切手を振り出して補給した。なお、当社は定額資金前渡法を採用し、小口現金として100,000円を前渡ししている。
【仕訳】(旅費交通費)55,000 |(当座預金)78,000
(通信費)17,200 |
(消耗品費)3,000 |
(雑費)2,800 |
②と③では、小口現金係から報告を受けたときの仕訳と補充をしたときの仕訳を分けていましたが、実際は報告を受けてすぐに補充する場合など、2回に分けて仕訳を打つのは面倒です。
そこで、最後に、報告を受けたときと補充をするタイミングが同じ場合の仕訳を考えてみましょう。
報告に基づいて、様々な経費を借方に計上していくのは同じです。
ここで、通常は貸方は小口現金を減らすのですが、そのあとすぐに当座預金から補充をするので、貸方に「当座預金」を置きます。
減らす分の「小口現金」と補充する分の「小口現金」が相殺されて無くなるイメージですね。
「小口現金」という勘定科目が全く出てきませんが、上の仕訳で完成となります。
まとめ
今回は、「小口現金」の仕訳方法について見ていきました。
「小口現金」とは、日常的に発生する細々とした支払いのために、各部署にあらかじめ渡しておくお金のことでした。
仕訳自体は難しいものではなく、すんなりと理解できる分野かと思います。
むしろ、小口現金から使用した様々な経費を、適切な勘定科目に振り分ける操作の方が難しいかもしれません。そのあたりは数をこなして慣れていきましょう。
次回は、普通預金や当座預金といった預金の種類と特徴について「預金の種目」について学んでいきましょう。それぞれの仕訳や注意点なども詳しく解説していきます。
それでは、今回もお疲れさまでした!
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