【謎の高配当株】結局JTに投資するのはアリなのかナシなのか

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投資

こんにちは、ホウボウです。

今回は、株式投資をやっている人にとっては、誰もが知っているだろうあの有名な「JT(日本たばこ産業株式会社)」の株について取り上げていきます。

先日2020年7月31日、下がり続けた株価はついに年初来最安となる1796.5円をつけ、配当利回りは驚愕の8.57%という他に例を見ない高配当株となりました。

基本的に、配当利回りが高いというのは、「配当金での株主還元に相当力を入れている」か「何らかの理由で株価が低迷して結果として利回りが高くなっている」かその両方のどれかになります。

流石にこれだけ配当利回りが高いと、素直に投資していいのか不安になりますし、ここ数年は株価自体が下落し続けているので、投資しても含み損が増えていくだけでなかなか手が出せないという方も多いのではないでしょうか?

もう少し会社の財務状況などまで詳しく見ている方は、約2兆円にものぼる「のれん」があるから危ないだとか、配当性向がすでに100%に近づいてきているとか、もっとテクニカルな指標を用いて、投資に慎重になっている意見も多く見られます。

高配当で注目度が高いだけに、やたらと情報量が多くて投資判断のしづらい銘柄ですが、結論から言うと、現時点でJTへの投資は「アリ」だと私は考えています。

理由は以下の通りです。

  • JTの大株主は財務大臣(政府)
  • 配当金の安定性を重視する姿勢
  • 株価の下落分よりも、配当金での投資回収率が勝る可能性
  • GPIFが買い増しを行っている

それでは順番に見ていきましょう。

法律に基づいて設立された特殊な株式会社

まずは、JT(日本たばこ産業株式会社)の特殊性を見ていきます。

投資をするにあたって、あまり考えたこともない方が多いかもしれませんが、日本の会社の中には「特殊会社」と呼ばれる会社があります。

特殊会社ってなに?

特殊会社とは、法律によって設置が定められた会社のことです。

有名なものでは、NTTグループ(通信インフラ)、日本郵政(郵便配達インフラ)、日本政策金融公庫(政策融資)、日本政策投資銀行(政策融資)、JRグループ(鉄道インフラ)、東京メトロ(地下鉄インフラ)、NEXCO(高速道路インフラ)などがあります。

具体例を見れば分かる通り、国の経済活動や生活を支える重要なインフラを担う会社が多いですね。

こういったみんなが必要とするもの(=公共性の高い事業)を扱うのは、本来は政府の役目ですが、行政機関として単純に税金を投じるよりも、ある程度の営利性を持たせて株式会社などとして民間企業と同じように活動する方が、サービスや価値の向上に繋がることもあります。

そこで、法律によって事業の内容や目的を明確にして設置した上のような会社がたくさん生まれました。それが特殊会社です。

JT(日本たばこ産業株式会社)も、この特殊会社のひとつであり、法律によって設置されている特別な会社であることは知っておくべきでしょう。

JTの場合は、「日本たばこ産業株式会社法」という昭和59年(1984年)に作られた法律によって設置されました。

試しに第一条を見てみましょう。

第一条 日本たばこ産業株式会社は、たばこ事業法第一条に規定する目的を達成するため、製造たばこの製造、販売及び輸入に関する事業を経営することを目的とする株式会社とする。

さらっと書いてありますが、ここに「株式会社」とあるからJTの株式は上場することができ、そして現在では超有名な高配当株として、皆さんに貴重な資金を分配することができるんですね。

また、ここで出てくる「たばこ事業法第一条」というのは、

第一条 この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

という条文で、つらつらと読みたくなくなる文章が続いていますが、最後の「財政収入の安定的確保・・・」という部分が重要で、つまり「たばこ税」による収入を安定的に確保することが目的とされています。

要するに、日本のたばこ産業は国策として進められている事業であるということになります。

現在は株式会社として、海外展開をしたり自由な活動を行っているようにも思えるJTですが、根本には「たばこ産業」の発展を目指して、「たばこ税」などの税収の形で財政に貢献することが至上命題なわけです。

たばこ税の税収

「たばこ税」による税収は、毎年約2兆円以上にのぼります。

この2兆円のうち、約半分は国の収入、もう半分は地方自治体の収入となります。

それでも1兆円を超える財源になりますから、国や自治体にとって「たばこ税」は貴重な収入源のひとつです。

今後完全民営化される可能性もありますが、現時点では、国策としての事業性もあるということで、安定的なたばこ事業の拡大が見込まれます。

JTの大株主は財務大臣

さて、先ほどの「たばこ産業株式会社法」に戻って第二条を見てみましょう。

第二条 政府は、常時、日本たばこ産業株式会社が発行している株式の総数の三分の一を超える株式を保有していなければならない

条文の通りですが、政府(財務大臣)は、日本たばこ産業株式会社の株式総数のうち3分の1を超える株式を保有する義務があります。

株探のホームページでJT(2914)を見てみると・・・

株探ホームページより引用

確かに大株主のトップに「財務大臣」持ち株比率33.5%となっています。法律の要請通り、3分の1以上を保有していますね!(まあ保有していないと法令違反なのでダメなのですが・・・)

たばこ税という税収もありますが、政府から見れば、JTの株を持っていることで株の配当金が入ってくることになります。

財務大臣のJT保有株は、666,925,200株ですから、1株当たりの配当金が154円なので、ざっと1000億円以上の配当金が政府に入ります

ちなみにこの配当金は、NTTなど他の配当金と合わせて、政府の「財政投融資特別会計」という特別会計の投資勘定に入り、日本政策投資銀行などを通して産業の開発や貿易振興のために再投資が行われます。

(※以上は難しい話ですが、一般会計と呼ばれる普通の国家予算とは別に、目的がはっきりした特別会計を用いて、JTなどの市場から得たリターンは同じく市場の産業発展に貢献するような再投資に回すということです)

配当金の急激な減少や、JTの財務状況悪化による株価の大幅な下落は、財政にとってもマイナスですから、財務大臣が筆頭大株主になっていることは、ある種の安心感があります。

配当金の安定性を重視した株主還元の方針

さて、次はJTが配当金などの株主還元についてどのように考えているか見ていきましょう。

株価が下落して相対的に配当利回りが高くなっているだけなら、なぜ株価が下落しているのかを見極めないと配当狙いだけで買うのは非常に危険です。

ただし、「株主還元に積極的な姿勢」があるのなら、それが評価されて株価の減少がある程度軽減されたり、配当金狙いの投資が多少は意味のあるものになってきたりするはずです。

JTの「経営計画2020」から、経営資源配分方針を引用します。

「経営資源配分方針」

  • 中⻑期に亘る持続的な利益成⻑に繋がる事業投資を最優先
  • 事業投資による利益成⻑と株主還元のバランスを重視

(JT『経営計画2020』スライド18より)

JTの経営方針は、「事業投資を最優先」です。

株主還元ではありません

ここ数年連続増配をしてきていますが、2020年は2019年と足並みをそろえて154円と増配とはなりませんでした。

増配とならなかったのは、この「事業投資を最優先」するという経営方針があるからでしょう。

JTは、大きく分けると「国内たばこ事業」「海外たばこ事業」「医薬事業」「加工食品事業」の4つの事業がありますが、2020年12月期「第2四半期決算短信」では、国内たばこ事業が苦戦する一方で、海外たばこ事業の収益が伸びています。

今後も海外市場での地理的拡大なども見込み、まずは「事業投資に力を入れる」ということで、中長期的な利益の安定には繋がるのではないかと期待ができます。

一方で、株主還元はバランスをとる程度とのことなので、利益成長がなければ株主還元も行われづらいという、高配当株狙いの人にとっては残念な方針でもあります。

今後、減配をするという可能性も大いにあることは心構えておきましょう

ただし、「経営方針2020」では、1株当たり配当金は安定性を重視するという言葉もあり、2020年は減配されず154円の据え置きとなりました。

配当性向も90%ありますが、安定性を重視するということは、大幅な減配の可能性はしばらくないかと思われます。

一時的な減配を行ったとしても、事業投資で安定的な成長が続けば、また増配に転じるのではないかと期待しています。

株価の下落よりも配当金収入の方が勝つ可能性

JTは2016年の4850円という株価から、2020年には半分以下の1900円台まで下がり続けてきました。

主な要因は、国内での屋内喫煙の規制強化や、世界的にたばこの健康リスクが認知されてきていること、またESG投資という環境や健康に配慮した企業へ投資を行うトレンドが生まれてきているからでしょう。

こういった現状を考えると、さらに株価が下落し続けるのは想像に難くありません。

では、どこまで株価が下落し続けるのかが問題となるのですが、株価ほど予測不可能なものは無いので、もちろんどこまで下落し続けるか「分からない」というのが答えになります。

ただ、それでは投資判断ができません。

そこで、先ほどまで見てきた経営方針や財務大臣が所管する特殊会社であることを踏まえて、トータルリターンを考えてみます。

仮に、配当金がしばらく154円をキープする(増配も減配もしない)と考えると、現在の配当利回りが約8%なので、税金などを考慮すると16年あれば配当金だけで投資資金を回収できます。

株主優待もある銘柄なので、優待も配当金もじっくり時間をかけて楽しみたいという方にとっては、もってこいの銘柄ですね。

また、事業投資により今後もより海外展開を行うとのことで、利益拡大は向こう16年程度であればまだまだ可能性のある話ではないかと思います。

どこで株価が底を打つかは全くの不明ですが、10年単位で見れば、今のうちに資金を投じておいて、優待や配当金でじわじわと回収しつつ、株価上昇のトレンドを待つ戦法も有効だと思います。

長期で見れば、配当金の恩恵の方が勝り、株価の下落分を補てんしても余るほどの利益が出ると私は思います。(個人の見解です)

あのGPIFもJTへの投資比率を増加

また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動向も見てみましょう。

GPIFってなに?

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、年金制度を持続可能なものにすることを使命として、今後100年間の年金財源となる積立金を運用している団体のことです。

今後日本で続く少子高齢化に伴い、保険料を納める現役世代が減少することを踏まえ、その負担が大きくなりすぎないように、現役世代が多い今のうちから余剰金を投資運用することで、将来の年金財源として備えるというものです。

2001年~2020年までの収益額(利益)はなんと70兆円にものぼり、収益率は2.97%(年率)となっています。運用資産額の合計は162兆円という、世界でも有数の最大規模の投資機関(機関投資家)です。

GPIFは、国民の貴重な年金を投資運用しているとだけあって、長期投資のお手本としてはこれ以上のものはありません

162兆円も持っている人はなかなかいないと思いますが、例えば162万円で同じような投資先に振り分けていけば、GPIFと同じような投資成績を出すことが可能だということです。

そのGPIFが、どんな銘柄を持ち、どのように株式数を増減させているかは、ひとつの大きな参考になります。

株探の「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が保有する銘柄一覧」を見ると、

2019年3月末から2020年3月末にかけて、JTの株は約40万株追加投資が行われています。

2019年もJTは株価下落トレンドでしたので、株価が下落していてもなおGPIFは買い増すという決断をしたわけです。

これが配当金収入を狙ったものなのか、株価の割安感をみたものなのかは分かりませんが、個人投資家にとっても心強い情報となるのではないでしょうか。

まとめ

今回の記事では、JT(日本たばこ産業株式会社)の投資判断について見ていきました。

長期目線では、十分に「アリ」な銘柄だと思われます。

もちろん様々な銘柄のうちのひとつという分散投資は欠かせないですが、政府の財源ともなっているJTの配当金が高利回りなのは魅力ですよね。

  • まだしばらくは株価の下落が続く恐れがある
  • 大幅ではなくとも配当金の減配はあり得る

上記2つの大きな懸念があることはわきまえておきましょう。

それでも、10年後ふたを開けてみたら十分利益が出るのではないかなと考えています。

デイトレーダーや優待配当金に興味のない資金効率を目指す方にとっては、あまり相性の良くない銘柄かもしれません。

自分の投資スタイルや目的に合わせて判断しましょう!

それでは、最後までお読みいただきまして、ありがとうござました。

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