【ギリシャ悲劇の最高傑作】ソポクレス『オイディプス王』

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雑学

こんにちは、ホウボウです。

今回の記事では、ギリシャ悲劇の最高傑作とも言われるソポクレス作『オイディプス王』について語っていきたいと思います。

自らの父親を殺し、そして母親と交わってしまった悲劇の王・オイディプス

その真実が明らかになっていくストーリー展開は、劇として非常に面白く、現代の我々が鑑賞しても思わず唸ってしまうほどの完成度です。

『オイディプス王』に関する様々な周辺知識とともに、悲劇的な内容について詳しく見ていきます(後半では、ネタバレを含みます)。

※なお、この記事の作成にあたっては、主に岩波文庫の【ソポクレス『オイディプス王』(藤沢令夫訳)】を参考にしています。

ギリシャ三大悲劇詩人「ソポクレス」「アイスキュロス」「エウリピデス」

まずは、『オイディプス王』の作者であるソポクレスを含む、3人のギリシャ三大悲劇詩人を見ていきましょう。

ギリシャ三大悲劇詩人
  • 「ソポクレス」(紀元前497~406年頃):アテナイで開催された悲劇のコンテストで、18回優勝し、残りはすべて2位だった著名な悲劇作家。それまで2人だった劇の演者に3人目を導入し、表現やストーリー展開の可能性を広げた。120ほどの作品を遺したと伝わっているが、完全な形で現存するのは7作品。
  • 「アイスキュロス」(紀元前525~456年頃):3人の中で最も早い時期に成功した悲劇作家。それまで1人の演者だった劇の俳優を2人に増やし、3部作構成を築き上げた。マラトンの戦い(紀元前490年)に従軍している。代表作は『アガメムノン』などのオレスティア3部作。90ほどの作品を遺したと伝わっているが、完全な形で現存するのは7作品。
  • 「エウリピデス」(紀元前480~406年頃):ソポクレスと同年代を生きた劇作家。革新的な作品が多く、神々や英雄というよりは、市井を反映した現実に沿った内容が特徴的。代表作は『メデイア』『アンドロマケ』。19作品が現存している。

3人に共通するのは、数多くの悲劇作品を作ったものの、現存しているものがわずかしかないということです。

2000年と数百年も昔の悲劇作品が、今でも残っているものがあるということ自体驚くべきことですが、作品の質の高さや当時の古代ギリシャを伝えるものだけに、失われた作品が多いということは残念極まりないですね。

今回取り上げる『オイディプス王』は、三大悲劇詩人のひとりであるソポクレスの作品で、古代ギリシャの超有名な哲学者・アリストテレスも著作『詩学』のなかで悲劇の傑作として取り上げています

『オイディプス王』のあらすじ

それでは、『オイディプス王』のあらすじを見てみましょう。

オイディプス王

古代ギリシャの都・テバイでは、疫病が広っており、作物は枯れ、人々は大きな災難に苦しめられていた。

そこで、時の王オイディプスは、自分の妃・イオカステの弟であるクレオンを使いにやり、アポロンの神託(神からのお告げ)を伺うことにした。

その神託は、オイディプスの前に王の地位にあったライオスを殺害した犯人こそがテバイに災厄をもたらしており、その者を追放するか罰する必要があるというものだった。

オイディプスは、先王であるライオスを殺害した犯人を必ず罰すると決心し、犯人探しに躍起となるが、盲目の預言者・テイレシアスから犯人はオイディプス自分自身であると宣告される。

これに激怒したオイディプスは、クレオンとテイレシアスによる罠だと感情的になるが、妃のイオカステから、昔ライオスとの間に授かった子供に関するアポロンの神託を聞いて、自分の出生の謎と重ねて不安と疑念が頭をよぎったのだった・・・

物語後半の核心部分は書いていませんが、物語が急展開を迎えるまでの前半部分のざっくりとしたあらすじはこんな感じです。

もともとは劇なので、演者とそのセリフがひたすら交互に続いていきます。説明的な補足の文章はほとんどありません。

前半部分のみならず、作品を通してとてもスピーディーな展開なので、さくさくと話が進んでいくところは、忙しい現代人にとっても嬉しいポイントかもしれません笑。

オイディプスがテバイの王になるまで

この『オイディプス王』では、前の王であったライオスの殺害者を探し出すという展開で物語が進んでいきます。

それでは、そもそもこのオイディプスは、どのようにしてライオスの後に王の地位へと就いたのでしょうか?

この疑問は、オイディプス自らが抱える自分の出生の謎へと繋がっていく重要な要素となります。

ライオスが殺害された後、王を失ったテバイの人たちは、スフィンクスという怪物に襲われていました。そこに遠くコリントスの地からやってきてスフィンクスを破ったのがオイディプスでした。

オイディプスは英雄としてテバイの王に招かれ、ライオスの妃であったイオカステと結ばれて4人の子供を授かったのです。

怪物として描かれたスフィンクス

ここで面白いのは、誰もが一度は聞いたことのある「スフィンクス」という怪物です。

「スフィンクス」は、ライオンの体と人の顔を持った架空の生物で、エジプト神話をはじめギリシャ神話やメソポタミア神話にも登場します。

古代エジプトでは、王家のシンボルとして扱われており、王の偉大さを示す神聖な存在として建設された、ギザのスフィンクスが有名ですよね。

ピラミッドの前に鎮座するスフィンクス

一方、ギリシャ神話など、この『オイディプス王』の中では、ライオンの身体、美しい人間の女性の顔と乳房のある胸、鷲の翼を持つ怪物として描かれています。

普段から慣れ親しんでいるスフィンクスとはだいぶ様子が違いますが、こちらがギリシャやメソポタミアで言う「スフィンクス」なのですね。

謎解きやゲームを好んだとされ、謎解きに失敗したテバイの民を食い殺す怪物として大変恐れられていたそうです。

有名な謎解きとしては、「朝は4本足で歩き、昼は2本足、夜は3本足で歩く生き物は何か」というものがあります。失敗しても食い殺されませんので、是非挑戦してみてください。

「人間」

生まれたときは赤ちゃんで両手両足を使い、大人になるにつれ2本足だけで歩くようになるが、年を取ってくると杖を使って歩くため。

このスフィンクスの謎を解いたオイディプスは、テバイの王になります。

しかし、今度はやがて疫病が広がって、『オイディプス王』の物語の始まりに繋がっていくわけですね。

ライオスとイオカステが受けたアポロンの神託とは?

後半部分では、いよいよ物語の核心に迫っていきます。

この先を読んだとしても、『オイディプス王』の話がつまらなくなってしまうことはないと思いますが、ネタバレを避けたい方は最後まで読み飛ばしてください

物語が急展開を迎える後半部分では、イオカステが昔受けたアポロンからの神託の話に移っていきます。

その神託は、「やがて生まれてくる子どもは父親を殺すだろう」というものでした。

その神託を受けたライオスとイオカステは、授かった子供を両足のくるぶしに留め金で繋いだうえで、召使いに山奥へと捨てさせたのでした。

それを聞いたオイディプスは、自分の受けた神託も思い出します。

それは、「自分の母親と交わり、そして自分を生んだ父親を殺害するだろう」というものでした。

オイディプスは、コリントスの王ポリュボスという父とメロペという母を持っていましたが、この恐ろしい神託を受けてから、この運命に逆らおうと国を出ていきます。そうやってたどり着いた土地がテバイなのでした。

そしてテバイの地にたどり着く前にスフィンクスを倒し、テバイの王として迎え入れられ、イオカステを妃として子供を授かります。

オイディプスという名前の意味

ここまで読んで、勘のいい方はなんとなくお気づきかもしれませんが、そうです。

このイオカステこそが、オイディプスの本当の母親であり、オイディプスは、コリントスからテバイまでの道のりで、父親であるライオスを殺害してしまったのです。

クライマックスでこの事実が明るみになる展開は本当によくできているので、是非岩波文庫などの本を購入して一読されることをオススメします!

「オイディプス」というのは、「腫れあがった足」という意味があるそうで、イオカステとライオスが自分の子供を捨てたときに付けた留め金の傷跡が、オイディプスの足にあったのですね。

オイディプスは、アポロンの恐ろしい神託を受けた子どもだったのです。

みんな運命から逃れようとしたのに

この『オイディプス王』の一番の見どころは、主要な登場人物である「イオカステ」「ライオス」「オイディプス」が各々自分の受けた恐ろしい神託から逃れようとしたにもかかわらず、結局はその運命通りになってしまったという部分にあります。

『オイディプス王』に関しては、運命とは何かという点に焦点を当てて解説されることが多いようです。

名著44 「オイディプス王」:100分 de 名著
「100分 de 名著」の番組公式サイトです。誰もが一度は読みたいと思いながらも、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を、25分×4回、つまり100分で読み解く新番組です。

個人的には、それぞれが最善を尽くして運命から逃れようとしたにもかかわらず、結局は運命通りの恐ろしい結末を招いたという、まさしく王道の悲劇というのがこの時代に高い完成度で演じられていたことに衝撃を受けました。

また、父親を殺し、近親相姦というタブーを侵すという設定は、いまにも通じる物語作品の原点のような印象も受けました。

作品のラストでは、イオカステは自殺をし、オイディプスは自分の眼を突き刺して盲目となるという本当に悲劇的な最後を迎えます。

オイディプス・コンプレックス

この『オイディプス王』という作品になぞらえて、オーストリアの著名な精神分析学者として知られるフロイトは、「オイディプス・コンプレックス」という概念を提唱しています。

オイディプス・コンプレックスとは、父親に対して強い対抗心を持ち、母親を手に入れようと欲する幼児期の心理を指します。

物語で登場する「父親を殺して母親と交わる」というアポロンの神託から取ってつけた名前が、心理学の中にも出てくることは興味深いですね。

まとめ

今回は、ソポクレスの『オイディプス王』について見ていきました。

古代ギリシャの悲劇の最高傑作は、その衝撃的なストーリーとともに、今でも考えさせられるものが多分にあります

一読すべき価値の有る作品だと思いますので、是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

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